2021.10.27
清藤直人先生インタビュー
~社会問題へ適用!キイコスタイルの魅力とは~
キイコスタイル研究会 関西 名誉会長
清藤直人先生
同年 清藤鍼灸院院長、
同年 大阪医科大学麻酔科ペインクリニック実習生
2006年 東洋医療専門学校非常勤講師
2007年 関西医療専門学校非常勤講師
2008年 京都医健専門学校非常勤講師
2011年 キイコスタイル 研究会 代表
2014年 大阪漢方鍼灸医学セミナー幹事
2019年 大阪府鍼灸師会 理事 青年委員長
2021年 キイコスタイル研究会 関西 名誉会長
川畑
本日はインタビューよろしくお願いいたします。
先生は珍しい経歴をお持ちだと伺っていますが、鍼灸に出会うまでの道のりを教えていただけますか?
清藤先生
実は高校卒業してすぐに鍼灸師になったわけではないんです。
母が鍼灸師で、私が鍼灸学校に入ったのは27歳になってからです。
それまで何をやっていたかと言いますと、何がやりたいかわからないので高校卒業後、1年間浪人をしましたが、最終的に大学へは行きたくなくて、それでも大阪芸術大学だけは本気で受験しましたが落ちました。そこで俳優になりたいと思い日本映画専門学校に入学出来ました。
先輩にウッチャンナンチャンや出川哲郎、後輩にドロンズやバカリズムがいた学校でした。
2年時に漫才の授業があり、そこで『内海桂子・好江』の好江師匠の授業がありまして、好江師匠に「あなた面白いから、マセキ芸能社に入れるよ?」と言われたんです。
俺はお笑いの世界で行けるのか!と思って、当時はまだ19歳で自信過剰だったので、東京で通用するのなら吉本に行けるのではないかというので、1993年にNSCに入学しました。
同期に小籔千豊、COWCOW、2丁拳銃。先輩に中川家、陣内智則、ケンドーコバヤシ、ハリウッドザコシショウ。後輩には、ブラマヨ、次長課長、フットボールアワーといるんですけど、僕らの期にはM−1ファイナリストがいなくて不作の時代と言われています。
NSCを半年くらいでやめて、路頭に迷いました。
競馬が好きなので、騎手になろうと思いましたが年齢でOUT。
ならば厩務員になろうと思い、千葉の牧場で修行し、笠松競馬場の厩務員募集に受かり面接のアポが取れたあと、母から一本の電話がはいったのです。
母も歳になったので鍼灸師をやめて治療院畳もうかと言った瞬間、これはちょっともったいないぞという気持ちになり鍼灸師を目指そうと思ったんです。
最初は鍼灸師になって馬のケアで笹針(血液の循環が悪くなり、うっ血状態を起こした馬に対して、肩や腰等部分的にあるいは全身的に針を刺し、うっ血をとる技術)出来るし、競馬に活かせるしと、鍼に興味をもちました。
でも、本当に鍼がすごい、と感じたのは20歳の時、東京で深夜バイトしながら生計を立てており、身体が死にそうなときに大阪から来た母に治療してもらったら、嘘のように身体がスッキリしたのがきっかけです。
川畑
お笑いや厩務員の経験がおありだったとは!
かなり珍しい経歴から鍼灸業界に入られた清藤先生ですが、キイコスタイルとはどのように出会ったのでしょうか?
清藤先生
キイコスタイルと出会ったのは、母がきっかけです。
私がまだ関西医療専門学校の2年生だった時に、母から「直人、臨床で効果が出るキイコスタイルというものがあるから、あなたそれをやりなさい」と言われて。
当時の関西医療専門学校は経絡治療や良導絡を教えていたのですけれども、脈診が難しくて分からなかったんです。
一方、キイコスタイルは現代医学的に診断して症状をお腹で診るんですね。腹診です。
これがとても分かりやすかった!
川畑
お母様が出会いのきっかけだったのですね。
腹診のお話が出ていましたが、先生は、キイコスタイルの魅力ってなんだと思われますか?
清藤先生
キイコスタイルの魅力は、一言で言うと『客観性』だと思いますね。
キイコスタイルではお腹を診る(腹診をする)のですけれども、それぞれ関係する場所や事象があります。みぞおちを押さえると精神的なものと関係するとか、右の季肋部を押さえると肝臓などに関係するとか。
左の下腹部は『瘀血』とか、右は『免疫』とか。
悪いところを押さえると患者さんも「イタっ」と言ってくれるんです。「なんでそんなところが痛いんだろう」と。
脈診だと、数脈とか沈脈とか色々表現がありますけど、施術者は分かっても、なかなか患者さんって「数脈ってどういうこと?」とか思うじゃないですか。
でもお腹の場合は、押さえると痛みを感じて「先生なんでそんなところが痛いんですか?」と質問されて、「ここが痛いのは血液の循環が悪いからで、東洋医学では瘀血と言って瘀血があると肩こりや腰痛を引き起こす原因になったりするんですよ」などと答えるんです。
患者さんからしたら「へぇそうなんですか、お腹と関係するんですね。」となる。
そこで圧痛点に応じた鍼治療を行うことで、そのお腹の痛みが消えるのと同時に肩こりといった痛みが改善し、それを患者さんと一緒に確認する。
このように、患者さんと共感でき客観性があるのが魅力だと思います。
川畑
客観性があるというのは、患者さんにとって効果も分かりやすいということなんですね。
清藤先生
そうですね。
よく「肩が痛いとか腰が痛いと言ってるのに、なんでお腹触るんですか?」と言われるのですけれども、後々治療してお腹の痛みが取れて、肩や腰を触ると不思議と楽になっているということがあります。
治療者側も硬かったのが緩んでいるのがわかるし、患者側もさっきすごく痛かったのに、治療後は軽くなってきていると一緒に共有できるのが、キイコスタイルの特徴であり素晴らしさだと思っております。
川畑
施術者と患者が効果を共有できるのは、とても大事なことですよね。
キイコスタイル考案者の松本岐子先生はずっとアメリカに住んでいらっしゃるのですよね。
海外でもキイコスタイルは広く勉強されているのでしょうか?
清藤先生
松本岐子先生のことを簡単に紹介すると、花田学園を卒業してすぐ海外に渡ったのですが、その当時は日本人が働く先がなかなかなかった。
そんななか、古本屋で『黄帝内経』だとか古典の難しい本を読んでいたら、偶然ご老人に声をかけられたそうです。
英語でだと思うのですけれども「君、そんなに難しい本が分かるの?」と言われて、「はい。」と答えたら、「じゃあウチの学校で講義してくれない?」と言われて行ったところが、なんとハーバード大学だったんです。
そこからハーバード大学のお医者さん達に講義をしたんですね。
外国人から日本の鍼灸ってこんなにすごいの?という感じでどんどん認められていったそうです。
日本でセミナーをやるときも世界8カ国ぐらい(スペイン、イタリア、アメリカ、カナダ、韓国など)から生徒さんが集まります。
岐子先生は日本からアメリカに渡って、アメリカで日本鍼灸を広めて、今では逆輸入というような感じですね。
川畑
偶然の出会いからのスタートだったのですね!
長野潔先生と松本岐子先生はどういう関係だったのでしょうか?
清藤先生
キイコスタイルというのは、長野式を考案された長野潔先生がいたから出来た技術です。
松本岐子先生は「長野潔先生がいたから私がいるのよ」というように常々おっしゃっていました。
岐子先生はアメリカに渡りましたが、師匠がいませんでした。
もともと学生時代に医道の日本でアルバイトをされていたのですが、医道の日本誌を読んで西洋医学と東洋医学の両面から治療できる先生を探していたんですね。
そこで見つけたのが、まさしく脈診を西洋医学の疾患に置き換えて、東洋医学で治療していくという長野潔先生だったんです。
岐子先生は、私の師匠はこの人だ!ということで電話したそうです。
「一回見学に行かせてもらっていいですか?」とお願いしたら、長野先生が答えた「どうぞどうぞ、いつでもいいからおいで。」という一言を聞いて『この人は本物の治療ができる人だ』と直感したそうです。
それが岐子先生と長野先生の出会いです。
川畑
そのような出会いがあったのですね。
国内外で様々な広がりを見せているキイコスタイルは、今後の社会に対してどのような貢献ができる技術だと考えていらっしゃいますか?
清藤先生
今の社会の直近の問題といえば、コロナだと思うんですね。
コロナウイルスに対して鍼灸師は何ができるか?という考え方をした時に、松本岐子先生は今でも色々な処置法を考え出されています。
「清藤くん、良い方法を思いついたわ!」というような感じです。
コロナのワクチンを打つと副反応の問題をよく聞きますよね。
岐子先生は、「それは脾臓が大事なんだ」ということを言われていました。
脾臓がこのウイルスが良いものか悪いものか判断をして、このウイルスをやっつけるというマークをつけるんだそうです。
それを白血球が感知してやっつけるんですけど、見たこともないようなウイルスが来ると、脾臓が敵なのか味方なのか判断がつかなくなるそうです。
もしくは身体が疲れ切っていると見逃してしまうというように考えると、脾臓がきちんと働いてないと防ぐことができないと理解できます。
そこで鍼灸で身体の働きを良い状態にしてあげれば、身体の免疫機構がしっかり働いてくれるはずです。
簡単にどう処置していくのかというと、
岐子先生は治療や処置を古典の漢字やツボの意味から色々考え出されます。
『血海』というツボは血の海と書くのですけれども、脾臓は血を貯蔵しているというところからまさしく脾経の『血海』は脾臓のことを表していると考えるそうです。
『地機』というツボが同じ脾経にあります。
機という字を見た時に、機(はた)の縦糸を動かす機械だという発想を持つそうです。
『地機』というのは万物を生み出すもの。悪くなった細胞をもう一回元に戻すとか、新しく生み出すという意味があると。
『地機』と『血海』に鍼を打つと左腹哀を押さえる痛みが寛解するのですけども、これはぜひ実技を見ていただければと思います。
川畑
クラスでぜひやっていただきたいと思います。
免疫力や感染抵抗力などはホットなキーワードですね。
清藤先生
社会問題というと、他にもうつ病や睡眠障害があると思います。
精神疾患の方、特にうつ病の方は睡眠不足になると、どうしても甘いものを取りたくなるそうです。
ある研究結果では、人間は深く睡眠が取れなくなると、糖質と脂質を取りたくなるというのが分かっています。
精神科医の中村元昭先生といって、松本岐子先生の治療を受けて、鍼灸に感銘を受けた先生がいらっしゃいますが、中村先生から「精神疾患の患者さんというのは、病院を抜け出して、お菓子を買って病室で分け合って食べている」と教えてくださいました。
ということは精神疾患と糖代謝が深く関係するのかなということが推察されますよね。
睡眠の異常や糖の異常、鬱などの精神疾患があると、みぞおちのところに圧痛が出てきます。
その圧痛が、頭の『神庭』『本神』に鍼をすると取れてくるんです。
なぜこのツボで効くのかというのが、岐子先生の古典からの解釈で、霊枢に本神編という項目があります。
本というのがオリジン・原点で、神というのが自分自身、それが本神というツボなのよと解釈をして、本神に鍼をすれば元の自分に戻れるのではないかということです。
だんだん今の症状が改善していくことで、うつ病や睡眠障害から患者さんを救えるのではないかなと思っています。
川畑
今、コロナの影響で自殺者も増えてしまいました。
現代社会の問題の一つで、鍼灸が貢献できる分野だと思うので、ぜひ皆さんに勉強していただきたいところですね。
今回、鍼灸師の学校では清藤先生のクラス以外にも様々なクラスを予定していますが、気になるクラスはありますか?
清藤先生
一言で言うと、全てに興味があります。
私はバイキングに行くとついつい全部取ってしまう派です(笑) 全部気になるのでちょこちょこ食いをするんです。
全部食べるんですけれども、最後これは美味しい!と思ったものをもう一回食べる。
何が言いたいかというと、鍼灸の学校の素晴らしいところは、ちょっと気になるからあれもこれもと試してみて、「自分にはこれが合っているかもしれない!」というように実体験から選択ができるところです。
そして、ちょこちょこ食いは良いんですけれども、最終的には皆さんに軸を見つけて欲しいなと思いますね。
川畑
ありがとうございます。
我々もそのような狙いもあって、様々なジャンルで、様々な先生にクラスを持っていただいています。皆様には様々なクラスを体験していただき、「私は、この分野・この技術を極めよう」というものを見つけていただけたら嬉しいです。
さて、今回先生には「鍼灸師の学校」のビジョンをお伝えしましたが、どんな思いを持って参加していただけたのでしょうか?
清藤先生
いろいろな流派の先生方が参加されていると思うのですけども、これまでの古い場だと残念ながらときどき喧嘩のようなことが起きたりします。
「鍼灸師の学校」だとそのようなこともないし、受講者の皆さんが流派の垣根を超えて学びたいものを学びたい時に選べると思うのです。
鍼灸師会のなかでも「業界を活性化してどんどん横のつながりを」と言うんですけど、実際には色々なしがらみがあって実現がなかなか難しいんですね。
鍼灸師の学校で、他流派の先生と知り合ってパイプを持てたら、鍼灸業界を変えるビックプロジェクトになるのではないかなと思います。
その中にキイコスタイルを選んでいただけたというのが本当に嬉しいです。
川畑
ありがとうございます。私たちもそうなれば良いなと思いながら様々な分野や流派の先生にしがらみなくお声がけしています。
目的は皆さん同じだと思いますので、そこに向かっていければと思っております。
今後、清藤先生のクラスでキイコスタイルを学びたいという人がたくさん出てくると思うのですが、将来のクラスの参加者の皆様にメッセージをお願いいたします。
清藤先生
養成学校では国家試験の内容に準じる必要があるので、養成学校では話せないことがこの「鍼灸師の学校」では話せます。
臨床でここに打てば効くんだよということも言えるし、学ぶ人たちが「こんなのに効くんだ。明日からやってみたい!」と思えるような、臨床が楽しくなるような、覚えられないというほどあれもこれもたくさん、お腹いっぱいにして内容盛りだくさんの授業にしたいなと思っています。
最終的には、皆さんと一緒に「笑いのある鍼灸」をしていきます。
鍼灸院には患者さんは疲れた顔で来るじゃないですか?
鍼をすると最後には「すごく楽になった、ありがとう」とニコッとして帰るんですよ。
そういう笑いもあるし、一つの治療には一つの笑いというふうに心がけています。
川畑
一施術一笑いということですね。
鍼灸師自らが仕事を楽しんで、それによって患者さんも笑顔になってくれるのが素敵ですね!
清藤先生のクラスで学んでいただくことで、患者さんが笑って喜んでくれる技術と知識を皆さんに身につけていただけることを確信いたしました。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
清藤先生、本日はお忙しいなかありがとうございました。