2021.10.27
冨田祥史先生インタビュー
~世界で活躍するYNSA(山元式新頭針療法)~
康祐堂あけぼの漢方鍼灸院院長 康祐堂株式会社代表取締役 一般社団法人YNSA学会理事
冨田 祥史先生
近畿大学卒
神戸東洋医療学院卒
康祐堂あけぼの漢方鍼灸院 院長
康祐堂株式会社代表取締役
一般社団法人YNSA学会 理事
関西中医鍼灸研究会
ケアワークモデル研究会
* 大阪の医療法人(外科病棟、回復期病棟、デイケアなど、スタッフ300名以上)の東洋医学部門の責任者を10年務めた後、実家の漢方薬局の2階に脳神経疾患専門の康祐堂鍼灸院を開業。
* 山元病院で3年間YNSAを研鑽された加藤直哉医師(YNSA学会会長)のYNSAのご指導を経て、日本人鍼灸師として初めて山元敏勝先生の宮崎YNSAセミナーを修了。全国でYNSAセミナーの講演を行っている。講演多数。
川畑
冨田先生、本日はインタビューよろしくお願いいたします。
今回、先生には「鍼灸師の学校」でYNSAのクラスを受け持っていただきますけれども、先生とYNSAの出会いを教えていただけますでしょうか?
冨田先生
10年ほど前、私は急性期病院と回復期リハビリ病院、デイケア、特養などの施設のある医療法人グループの中の、リハビリ病院の中にある難病専門外来の責任者として10年間勤務していました。
そこでは脳梗塞やパーキンソン病の方を毎日担当させていただいていて、脳血管障害に対して、なかなか有効な手立てがないということにジレンマを感じていたのです。
東京だと牧田クリニックなどでされているような「醒脳開竅法」という天津中医薬大学で行われている麻痺の治療法がありまして、その「醒脳開竅法」は抹消に強い刺激を与えて、筋強剛を落として身体の状態を改善するような治療法です。
一定の治療効果は感じていたのですけれども、やはり脳の病気だから、脳に刺激した方が良いのではないかということは常々思っていました。
もともと学生時代からパーキンソン病や脳の疾患に興味があったので、海外の頭皮鍼で麻痺を改善する治療法があるっていうのは知っていたのです。
特に、「朱氏頭皮鍼」という朱明清先生がされているような頭皮鍼というのがすごく有名な治療法であったのですけども、その頭皮鍼を受けることによってどうやら麻痺が良くなるということを聴いてはいたのですが、日本では全くセミナーなどが行われてなくて、なかなかその技術を学ぶことができなかったのです。
毎日麻痺の患者さんを回復期病棟で見ていると「手が動かないのです」「足が麻痺で伸びないのです」という言葉をよく聞ききます。なかなか効果が出せない中で何か鍼灸師としてできる治療がないかといろいろな文献を調べていたところ、日本の宮崎に日本発の頭皮鍼「山元式新頭針療法」をされている山元敏勝先生がいて、世界的なすごい先生だというのが分かったのですね。
ぜひ勉強したいなと思ったのですけれども、当時のYNSAって医師のみ受講が許されていたので、参加することが出来なかったのです。
山元先生は医師でもあり、ISOM(国際医師鍼灸連盟)というドクターの中で鍼灸をされるグループの連盟があり、世界的な組織なのですけれども、山元先生は会長を務められていらっしゃいました。
ISOMの会長だったので、山元先生は鍼灸師には教えることができないというのを当時はおっしゃっていたのですね。
勉強したいけれど勉強できないということで、何か方法はないかなと思っていたところ、兄弟子の加藤直哉先生という医師とたまたまご縁をいただきました。
彼は山元病院で山元敏勝先生のもとで働きYNSAを3年間学んでいた日本で唯一のドクターです。
ある学会で加藤先生がYNSAを実践されていることを知り、とても興味を持っていました。
いつかご縁が出来たら良いなと思っていたのですが、当時僕が回復期リハビリ病棟の中の難病専門鍼灸外来をしていて、そこで高濃度炭酸泉を使用して様々な体の不調を改善するHSP(ヒートショックプロテイン)を誘導する温熱療法の研究をしていたのですが、がん患者さんのQOLを上げたりリウマチなどを改善したりする効果が高いということで、学会や研究会で発表させていただいていました。
それを加藤先生が偶然見学にいらっしゃると言うことがありまして、その際に、「僕の持っている炭酸泉や温熱療法のリウマチに対する治療方法を教える代わりに、YNSAを教えてもらえないですか?」とお願いしたところ、加藤先生に快諾していただくことが出来ました。
当時、パーキンソン病や脳梗塞の患者さんを何人か集めて、自分で見様見真似でYNSAの本などを読んでYNSAを施術していたのですが、全く治療効果が出せませんでした。
そこで、当時僕が担当していたパーキンソン病や脳梗塞の患者さんを集めて、目の前で加藤先生に治療していただいたんですね。
そうすると、今まで少ししか手が上がらなかった脳梗塞の患者さんに加藤先生が「ここにツボありますね、ここですよ」とYNSAのツボを探って、そこに鍼を刺すと、自分が半年間治療していて手応えを感じることが出来なかった脳梗塞患者さんの手が、グッとその場で上がったんですね。
頭を殴られたような衝撃を受けました。
「先生、これはどうやってやるんですか?」といって、マン・ツー・マンで「ここにツボがあって、ここに刺すんです」と教えてもらって、次の日からできるようになったんです。
本質的な鍼灸技術のやり方を本だけ、DVDだけで学ぶのは難しいと感じた瞬間でした。
それで、その当時、どうしても宮崎の山元先生の元で勉強したいという思いが強くなりました。
英語のセミナーしかなくて躊躇したんですけども、大阪大学を出られた脳外科の医師の先生にたまたま「宮崎にYNSAセミナーがあって学びに行くので、先生の一緒に行きませんか?」と声をかけていただきまして、
ダメ元で山元先生に「加藤先生とご縁があって、YNSAを教えていただいたんです。僕も勉強したいのでぜひ学ばせてください」とお話をしたところ、「加藤先生の紹介だったら良いですよ」とお返事をいただいて、日本人鍼灸師として初めて宮崎で学ばせていただく事が出来ました。
宮崎で勉強していたら、イスラエルやイギリスから先生が来ていて、世界的な先生だとは聞いていたんですけど、こんなすごい先生だったんだと改めて思いました。
そこから一緒に勉強させていただいたんですけども、ヨボヨボで「腰が痛いんです、歩けないんです」と言っていた高齢の患者さんが山元先生が鍼をすると「痛みがなくなったわ」といってスタスタ帰られたり、パーキンソン病で体が傾いているような患者さんが、山元先生がYNSAの鍼をしたあと真っ直ぐになって帰れるようになったり、そこでも頭を殴られたような衝撃を受けました。
この治療法を日本の鍼灸師の先生が学べないのは国家的な損失だと本気で思ったので、山元先生に
「日本の鍼灸の先生もきっとYNSAを勉強したいと思うので、日本の鍼灸師の先生にも門戸を開いてもらえないですか?」と話をしたところ、山元先生が「私は35年ここでやっているけど、日本の医師会から35年無視されている」と仰ったんですね。
「ひどいですね」という話をしたら「日本の鍼灸師会からも35年間、無視されている(笑)」「日本の先生は興味がないんだと思う」という話をされていて、
私が「そんなこと絶対ないです。僕が同じ志の先生方に少しずつでも広めていって、日本にはこういう素晴らしい技術があるんですというのを伝えますから」ということで、山元先生の許可を得て、あちこちでイントロダクションセミナーやプレゼンテーションをさせていただくようにしました。
同時に加藤先生も東京に山元先生を招聘してセミナーを行ってYNSAの普及に務めたのです、そうすると日本人鍼灸師から山元先生のところに問い合わせが増えてきたようで、それで日本の鍼灸の先生向けのセミナーを開催しますということになり、日本人鍼灸師も参加できる日本語のセミナーが開催されて、日本人鍼灸師もYNSAを学べるようになりました。
最初は麻痺の患者さんを治療したいという思いで、いろんな文献をあたったりとか、勉強していったのですが、なかなか勉強できなかったり、身に付かなかったり、効果が出せなかった。
それを、山元先生と加藤先生とご縁をいただいてできるようになったのがYNSAとの出会い、馴れ初めというかきっかけですね。
川畑
最初のお話だけでドラマが作れそうなとても面白いストーリーでした。
先生の患者さんに対する「もっと何かできることがないか」というところからスタートして、勉強されて、探し当てて、さらにまた行動に移されて。
相当な情熱がないとなかなか山元先生の元で学ぶところまで行けないと思います。
冨田先生の情熱と行動が原点だったんだなとあらためて感じました。
一言では言い表せないと思うのですが、YNSAという技術の魅力というのはズバリどのようなことでしょうか?
冨田先生
脳神経疾患、特に片麻痺や脳梗塞に対しての鍼灸治療というのは海外では普通に学校で教えられています。頭皮鍼も海外の鍼灸大学とか専門学校では普通にカリキュラムに入っているのですよ。
日本では自分自身もそうだったのですけれども学んだこともないし、存在すらも無視されているような状態だったのですね。
脳神経疾患に対する鍼灸治療は、治療方法を系統的に教えてくれるところがありません。その点で、YNSAはパーキンソン病や脳梗塞、脳出血などの脳神経疾患、また慢性疾患や慢性疼痛に対して、素晴らしい効果があるというのが最大の魅力ですね。
それと、誰がやっても同じ治療効果が出るように、プロトコール(診察、治療の手順)が決まっている点も魅力ですね。
例えば自分も出身は漢方鍼会にいたので、脈診を取る経絡治療家ではあったのですけれども、日本鍼灸だと脈診やお腹を触れたりしますよね。これも素晴らしい技術なのですが、習得に一定の時間がかかります。
中医学だったら、東洋医学の中医理論を学ばなくてはいけないですよね。舌診だとか。
膨大な中医学理論のバックグラウンドを勉強した上で選穴するという難しさがあります。
ところが、YNSAというのは手順が決まっていて診断から治療までの流れが鍼灸初心者にも、とても明確でわかりやすいのです。
診断点があり、その診断点に反応があればそれに対応している治療点に施術する。
例えば、頚椎の診断点に反応があったら、A点を治療する。腰椎の診断点に反応があったらD点を治療する。
首診の肝に反応があったら、頭の肝に対応しているYNSAの肝の治療点を治療するなど、非常にシンプルで、手順が明確で迷いがないんです。
自分も東洋医学を学んでいるので東洋医学理論の難しい部分もすごく大事なんですけれども、脈診、舌診などの曖昧な部分、習得に何年もかかるというような部分はYNSAにはなくて、手順が決まっていて、誰でもそれを次の日から使うことができる。
一定の手順に従ってやることによって、誰でも一定の治療効果が出せるというところが非常に大きな魅力だと思います。
だから東洋医学的な知識や鍼灸を学んだことがない医師に受けたのだと思います。また開発者が医師なので医師に広まっていった事もあるかもしれないですね。
YNSAが医師との共通言語になりうる部分があるので、それも非常に良い部分かなと思います。
川畑
なるほど、再現性が高いとも言い換えられるでしょうか。
鍼灸はグラデーションがあって、極めてアート寄りの技術もあれば、サイエンス寄りもあればというところですけれども。
冨田先生
自分も経絡治療や日本の鍼灸の名人と呼ばれる人が、不思議と思える鍼灸で色々な疾患を治すというのを目の当たりにしているので、アートであるからこその良いところもたくさんあると思います。
名人である山元先生のYNSAもアートの部分もあるのですけれども、やはりYNSAが日々困っている目の前の患者さんに対して即効性と再現性があり、学ぶということにおいては一定の手順があって、しかもわかりやすくて、効果が高いというのは非常にメリットが高いと思います。
もちろんサイエンス寄りの部分でもYNSAはpubmedに論文が何本も掲載されていて世界各国でYNSAはきちんと評価されています。
川畑
誰でも学びやすい、習得しやすいというのは大切な点ですね。
先生が出会われた当時から山元先生はISOMの会長でいらっしゃって、既に海外の人が学びに来られているという状況であったわけですけれども、そこから現在まで世界ではどんな広がりを見せているのでしょうか?
冨田先生
全世界で大体10万人以上の医療従事者が実際にプラクティショナーとして、治療を行っていると言われています。
アメリカではハーバード大学で山元先生が二回ほど講演されていますし、例えばドイツでは医大の正式な授業の中に鍼が入っているんですね。
ドイツの医師は整形外科の分野では必ず鍼を学ぶんですけれども、普通、鍼灸って中医学がページを割かれているはずなのですが、そこで一番多くページが割かれているのが中医学ではなくてYNSAなんです。
つまり医大で整形外科のドクターはYNSAを学ぶシステムになっているようです。
ドイツではハーブなどを使うハイデルプラクティカー、自然療法士という資格があるんですが、その中でもYNSAは非常に人気なトリートメントとして受講者も多いそうです。
ほかにはイタリアの国立代替医療センターでも山元先生は客員教授をされていたりだとか、あとはエジプトの国立研究所でも研究者がいてYNSAの研究が発表されていたりしますね。
それからブラジルが最もYNSAに人気があってですね、ルラ元大統領という方がいらっしゃったんですけれども、その方が選挙遊説中に手の振りすぎで手が上がらなくなったんですね。
色々な西洋医学のドクターを訪ねたんだけれども、「これはもう手術するしかない」と言われたそうです、そこで山元先生のお弟子さんが「僕がやります」といって施術したらその場で手が上がったそうです。
それ以降YNSAは大統領令でブラジルの国の医療として認められているそうです。
ブラジルでは非常に多くのプラクティショナーがいて、2010年に開かれたYNSAの世界大会だと1000人以上の人が集まって立ち見が出たという話もありますね。
世界各国でYNSAを学んだ先生達は独自の勉強会をスペインやドイツ、トルコなどでも開催していて、年々プラクティショナーが増えてきていると聞きます。
川畑
すごい!良い技術は自然に広まりますね。
冨田先生
ブラジルではドクターがYNSAはすごく効くのでドクターによる囲い込み運動があって、ドクター以外はYNSAできなくしようという動きがあったそうです(笑)。
またブラジルのある県で、YNSAを国の医療として認可して、県の中でYNSAを大々的に使用したら、鎮痛剤の使用量が11%下がったということで、山元先生は国から勲章を受けています。
医療財政を救うと言う意味もYNSAにはあるということで、世界中のあちこちで注目されている治療法ですね。
川畑
ありがとうございます。
やはり海外の方が良いものは良いと認める土壌があるんでしょうね。
冨田先生
海外の先生だと「これは良い!」と言うことで本当に取り入れたりとかする方が多いですね。
イギリスやイスラエル、フランスなどからドクターが勉強しに来ていましたけれども、やはり「YNSAはすごいのよ!」といって毎年来ている方もいらっしゃって、やはりすごく注目されているんだなと思いました。
川畑
富田先生の力で十分伝わってきているとは思いますけれども、ますますこれは日本人の鍼灸師の皆さんに伝えないといけない技術ですね。
今回、先生が講師を務めていただけるのが広い意味で「頭皮鍼」となりますが、脳血管障害のリハビリやリウマチなど色々な領域で活躍できる事があると思います。
先生が特に現在注目されているトピックや研究成果などがあれば教えていただけますでしょうか?
冨田先生
もともと頭皮鍼は脳血管障害やパーキンソン病などの疾患に効くと言うのは分かっていたんですが、最近は、慢性疼痛など痛みに有効だということが分かってきています。
慢性疼痛というのは脳で感じていること、脳のある種のエラーと言われています。
抹消から鍼刺激するのと同時に、脳に対して直接アプローチできるのが、非常に良いのだろうと考えています。
それから、一番面白いのは不安ですね。いわゆるパニック障害だとか不安神経症ですね。
これが今ハーバード大学でとても興味深い研究をしていて、ファンクショナルMRIを使用して『不安症の方というのは脳のここの部分とここの部分の血流障害があって、その血流障害に対して鍼灸でいうとツボがここなので、ここに鍼をしたら良いんじゃないか』というようなアプローチの論文が出ているんです。
ハーバード大学のfMRIの有名な先生がされているんですけれども。
うつ病や不安、パニック障害などの今社会問題になっているようなものに対しても一定の効果があるので、そういった意味でも非常に面白いところかなと思います。
もう一つは、統合失調症ですね。頭に鍼をすると幻覚とか幻聴が聞こえにくくなったとか、聞こえなくなったというのがあるので、統合失調症は現在は薬以外に有効な治療法が少ないのですが、そういったものに対しても頭に鍼を刺すというのが有効なことが多いです。
あとはめまいなどですね。めまいや浮遊感というのは西洋医学的になかなか難しい疾患なのですけれども、多くのめまいにもYNSAは有効です
川畑
頭皮鍼には、様々な領域で可能性があるのですね。
不安とか慢性疼痛というのは国民病なのではないかと思うぐらい多いですからね。
冨田先生
ファンクショナルMRI や脳の血流を測るNIRSなどで見ていると、脳機能が不活化していたり、前頭部、前頭前野の血流が変わっていたり、鍼をすると視界が明るくなったとか、頭がスッキリしたというのが非常に多いので、仕事的なパフォーマンスの低下に対してとか、ビジネスパーソンのパフォーマンスの向上に役立てていけるのではないかなと思います。
脳が大きくの関係している問題なので頭に直接刺激してあげたほうが、やはり良いかなというところはありますよね。
川畑
大変興味深いですね。先生のところで一度頭の施術を受けたいと思いました。
今お話された以外に、YNSAの技術や頭皮鍼の技術はこれから社会に対してどのような貢献ができるとお考えでいらっしゃいますか?
冨田先生
個人と国の医療費を両方下げるというのが大きな部分ですよね。
投薬量を減らしたり、疼痛を下げたりなどですね。
最近は頭痛がトピックになっていますけれども、頭痛や慢性疼痛であれば、痛みのレベルを下げたり、鎮痛剤の使用量を下げたりすることができるんじゃないかなと思います。
川畑
おっしゃる通りですね。ありがとうございます。
今回、「鍼灸師の学校」では他にも様々なコンテンツを企画しているのですが、先生がこのクラス面白そうだなとか気になるなどありましたらお聞かせくださいますか?
冨田先生
エビデンスに裏付けられた膨大な治療例を持っている東大の粕谷先生のお話や、頭痛の菊池先生の治療などは聞いてみたいですね。
大学病院での臨床をされている先生のお話はもちろん興味深いですし。一次性の頭痛に関して鍼灸は効果があるというエビデンスが出ていますので、そういったものを学べるのは良いところですね。
あとは、キイコスタイルは海外ではとても有名なので、日本でも学べるというのは非常に良いところですよね。
寺澤先生は医はき師で、お医者さんサイドから見た鍼灸と病院との連携ですね。
病鍼連携というのは我々が学生の時は学校で一切触れられなかったですから、各自が個人個人でされているというところだったと思います。
ここで21世紀型の医療ということを考えたときに、我々は医療資源になり得ていないというところがあるので、寺澤先生のような医師で鍼灸に理解のある先生のクラスがあったり菊池先生のように大学病院で輪唱されている先生のクラスがあると、医療の現場での鍼灸活用の声が聞けて、鍼灸の活躍できるフィールドが増えていくのではないかと非常に期待しております。
川畑
ありがとうございます。
今回、「鍼灸師の学校」のビジョンを先生にお話しさせていただいたんですけれども、どのような思いを持って鍼灸師の学校に参加いただけたのでしょうか?
冨田先生
私の学生時代は、養成校で麻痺に対する鍼灸治療や頭皮鍼治療はほとんど学ぶことができませんでした。
学生時代文献を調べていくと頭皮鍼というのがあって、どうやら脳梗塞や脳神経疾患の患者さんに有効だということはわかっていたんですけれども、学ぶことがなかなかできなくて、とてももどかしい思いをしました。
また私自身、実際にリハビリテーション病院内での片麻痺の臨床の現場にいてもなかなか治療効果が出せずに、患者さんに申し訳ないというか歯痒い思いをした時代が長かったので、同じように脳神経疾患や難治性疾患の治療でなかなか効果を出せずに困っている鍼灸師さんの助けになれば良いなと思っております。
臨床上遭遇する可能性が高い脳梗塞やパーキンソン病の患者さんに対する治療をこのクラスで学んでいただき、困っている患者さんを一人でも多く助けていただきたいです。
川畑
ありがとうございます。
先生が加藤先生や山元先生にアプローチした時の原点をずっとお持ちでいらっしゃるのだなと感じました。
ブレない姿勢が素敵ですね。
冨田先生
山元先生がいつも学会のご挨拶でお話されることがあります。
先生は本当に世界的に有名な先生なので色々なところで講演するのですけども、最後のまとめの言葉が、いつも一言だけで、「YNSAを使って困っている人を助けてください」とこれだけなんですね。
本当にシンプルなので、我々もこれはブレてはいけないなと。
YNSAの技術は素晴らしいのですが、技術だけでなく、山元先生の臨床姿勢や想いも伝えていければなと思っています。
川畑
山元先生の魂が脈々と引き継がれているのですね。
最後に、先生のクラスで学ぶ鍼灸師の皆さんにメッセージをいただければと思っております。
冨田先生
本当に山元先生の言う通りで、YNSAを使って困っている人を助けていただければと思っております。
また、理学療法士や看護師さんなど他の医療職にできないこと、助けになることを鍼灸師はできるのではないかと実はすごく思っていて、我々自身もその価値に気づいてない部分があるんですよね。もっと医療として入っていくことによって本邦の困っている患者さんを助けることができる可能性があると思います。
海外でもこれだけ広がっていくことを考えても、YNSAだけでなく日本鍼灸というものは困っている方を助ける手助けにきっとなると思うので、一緒に学んで困っている人を助けることができれば私自身嬉しいですし、師の山元先生もきっと喜んでくださると思います。
川畑
ありがとうございます。
このクラスを通じてYNSAのまずは基本だと思うのですけれども、基本を学んで、どんどんその道を極めていってくれる鍼灸師さんが間違いなく増えるだろうということを、先生のお話を聞いて確信いたしました。
冨田先生、お忙しいところ本当にありがとうございました。